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| 佐藤幹夫 | 2001/10/29 | テロリズムから始まり一般意志へ 佐伯啓思『国家についての考察』をめぐって | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | ||||
| 小浜逸郎 | 2002/1/15 | Re:テロリズムから始まり一般意志へ -返信1- | 1 | 2 | 3 | 4 | |||||||
| 小浜逸郎 | 2002/5/10 | Re:テロリズムから始まり一般意志へ -返信2- | 1 | 2 | 3 | ||||||||
| 佐藤幹夫 | 2002/11/24 | 最悪の「戦争」について、ひとつだけ加えておきたいこと | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |||
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モスクワの「劇場占拠事件」 第二信も、昨年の9・11テロとあきらかに連動する「きな臭さ」の中で書き始めています。 この国が北朝鮮拉致問題に大揺れしているなか、まずはインドネシアのバリ島で、外国人をターゲットとしたイスラム過激派によるテロがおきました。すると、それから十日も経ないうちに今度はモスクワで、チェチェン独立派武装グループによる劇場占拠事件です。そして二十日ほど後の11月14日には、これはどちらも反米テロであり、アメリカおよびそのの同盟国は、今後もテロの恐怖に襲われるだろうという、ビンラディンの「声」が報道番組で公開されました。ますます事態はアメリカ(及び同盟国)対テロリスト(と支援国家)という対立の構図が鮮明になっていますが、わたしには、それに乗じたようなロシア政府の「強硬姿勢」が、否が応でも目に付かざるを得ませんでした。 すでに報道されていることではあるのですが、モスクワでの劇場占拠事件について、簡単に列記してみます。 武装勢力は突撃した特殊部隊との銃撃戦の末に全員射殺され、人質700人中、死亡者は117人に上り、そのうちの115人が、突撃の際に使用した特殊ガスで死亡したこと。プーチン大統領は、国際的テロ行為の一環のなかで位置づけようとしているが、しかしこれはロシアからの独立を求める闘争、つまりはロシア一国の内政問題だということ。しかしまたチェチェン武装派グループは、中東のイスラム過激派との水面下での結びつきをもち、今回のロシア政府の対応は、独立運動の推進グループを再結集させ、テロの危険をヨーロッパ全土に飛火させたものであることなど、今後の危惧を指摘する見解も報じていました。 しかも、このガスが何であるか、ロシア政府はテロリストへの対策上、明らかにしておらず、そのことが、必要な解毒剤の投与ができないなどの治療の遅れを生じさせ、多くの死者を生む最大の要因となったとされています(後になって、麻酔薬であると公表しましたが、当然のごとく疑問視されています)。そして、これは対テロリストとの闘いであり、妥協はありえないとするプーチンの声明を、米やEU、中国など主要各国は支持しました。詳しい内情は分かりませんが、わたしが驚かされたことは、このように最悪の事態をもたらしたにもかかわらず、ロシアの世論において「人命軽視である」などという批判が噴出していないばかりか、プーチンが支持率を上げたというのが、どうも事実のようなのです。 ちょうど事件の直後、モスクワに数年滞在していたという知人と合い、話を聞く機会がありました。わたしの驚きに対し、知人は、それがロシアなのだとくり返していました。数年前に起きたモスクワ市内での爆弾テロが、政府やモスクワ市民の凄まじい憎悪を醸成し、ロシア民族特有の国家主義的心情と重なりながら、周辺少数民族への排外感情となっていること。しかしそうやって弾圧され続けてきた側のほうも、激しい憎しみをもっている、とロシア民族に固有の「分かりがたさ」を交えながら知人は話していました。 ロシア人はヒトラーのドイツ軍がロシアに侵攻した第二次世界大戦を「大祖国戦争」と名づけたわけですが、スターリングラードの攻防をどう戦ったか、老人たちは酒などが入ると、いまも語り草にしているといいます。興が乗ってくると、小さな人骨などの「戦利品」まで持ち出してきては自分の闘いぶりを長々と誇り続ける。そのパッショネイトな「祖国愛」は、日常においては屈折したかたちで沈潜している一方、なにか事が起こると、今回の政府対応を支持するような、ファナティックな「祖国主義」として現われる。 知人は、ロシア人の振幅の大きな「わかりがたさ」を、おおむねそのように述べていました。たしかにわたしにも、アメリカ以上の泥臭い激しさがそこには感じられました。幾分かの皮肉をこめて言うなら、かつてドストエフスキーが描いて見せた、ファナティックな「スラブ主義=祖国愛」が、ロシアにおいてはいまだ健在なのだということになります。 そしてアメリカも、まもなくイラクへの軍事的制圧を始めようとしており、また北朝鮮の核兵器の保有をめぐって、外交努力をと言いながら重油の輸出を凍結するなど、強硬姿勢を貫こうとしています。言ってみればロシアもアメリカも、自国の国益のことなどはおくびにも出さずに、対テロリストとの「戦争」においてどう振舞うかのみを、世界へむけて発信しているわけです。そして、どこからどう見ても、テロリスト対国際社会という世界構図ができあがったわけです。 「我われには、テロリストとの妥協はありえない。もとより多大な犠牲は覚悟のうえである。それがこの戦争であるが、さて君はどちらにつくのか」。これが、いまのわたしたちに差しだされた問いです。きわめて単純な、二項対立のかたちをしている。そして「正義」のありかにおいても、疑いのないかたちをしている。よく言われることながら、この二元的単純さは、アメリカという国の「理念」そのものです。 |
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