*なお、この文章は、宮崎日日新聞社の要請により、オリジナルとして提出したものを一部改稿してあります。
「冬ソナ」ブームに明け暮れた一年だった。主役ペ・ヨンジュンに寄せる中高年女性ファンの熱い眼差しはついにけが人まで出し、それに対するヨン様の対応がまた何とも言えない優等生ぶりだった。ヨン様だけでなく他にも韓国ドラマに出演する男優たちに対する人気はたいへんなものらしい。
いったいこのブーム現象はなぜ? と疑問を抱いた人もさぞ多いことだろう。一つの有力な説として考えられるのは、ファンの中心層をなす中高年女性が自分たちの若いころ成就できなかった純愛や初恋の夢を、あの清純なイメージの役者(たち)が満たしてくれるから、というものだ。日本の若手男性芸能人にもはやそれを求めてもかなえられない。しかもドラマの書き割りや小道具のほうは、いまの日本と変わらないハイレベルで先端的でおしゃれな雰囲気を存分に醸し出してくれる。この組み合わせの妙に秘密があるのかも知れない。
しかし何にせよ、集団心理を論理的に解き明かすのは難しいものだ……などと思っていたら、ある民法テレビ局でヨン様インタビュー番組をやっているのをたまたま最後のほうだけ見て、論理的にはともかく、感覚的には何となく納得できるものがあった。ペ・ヨンジュンという俳優はなかなかの大器である。「お客様は神様」ならぬ「ファンは家族」なる構えを徹底的につらぬくソツのない応答ぶり、知的な風貌、何気なくみせるちょっとシャイな身振りや表情、役のために苛酷な訓練にたえて筋肉を鍛え上げるその努力。現代日本の社交界である芸能界のプリンスとしてまことにふさわしい。
そして筆者は、この「プリンス」という言葉を思いついたとたん、そこからある突飛な着想を得た。そうだ。ヨン様は、日本の中高年女性にとってまさに期待された「プリンス」なのだ。何が言いたいか、賢明な読者はもうおわかりだろう。
今年は、将来の皇位継承をめぐる皇室の苦悩がさかんに取りざたされた年でもある。筆者個人は、象徴天皇制はこれまでうまく機能してきたと思っているし、今後も続くなら続けばよいし、緩やかな消滅に向かうならそれもかまわないし、女帝を立てるならそれも大いにけっこうと思っている。いずれにしても、この問題自体にあまり強い関心はない。だがひょっとして一般庶民、ことに中高年女性の多くはその深層心理のなかでこの皇室のごたごたに半ば愛想を尽かし、その裏返しとして、あるべき未来の「プリンス」像を探し求めているのではないか。
さてもしそうだとすると、いつの将来かわからないが、次のような可能性もあながち筆者個人の妄想とばかりは言えない気がしてくる。皇位継承が本当に危うくなったとき、皇室の存続を真剣に考えるならば、どこか外国の高貴な人を女婿として迎え入れて、何とか形式を整えるというオプションである。過去にも名誉革命後のイギリスにおいて、オレンジ公ウィリアムとメアリーという先例があるし、国技の相撲もすっかり国際化してしまっている。高齢社会における中高年女性の心情的なパワーを侮ってはならないと思うが、いかがなものだろうか。
(前回「中越地震」を誤って「上越地震」と記載してしまいました。訂正してお詫びいたします。)