筆者は経済に関しては門外漢である。しかし不景気、不景気とこれほど人を意気消沈させる声が聞かれると、専門家などそっちのけにして「要するに内需の伸びない原因のひとつはこういうことなんじゃないの」と素人なりの意見の一つも言ってみたくなる。
現在、個人の総預貯金額は一千二百兆円に上る。これを国民一人当たりに換算すると、約一千万円になる。赤ん坊も子どももみんな入れてである。すると、たとえば働き盛りの平均的なサラリーマン家庭で、四人家族だったら四千万円の貯金を持っている計算になる。そんなに持っているとはとても思えない。では誰(だれ)が握っているのか?答えは二つしか考えられない。世代に関係なく富が著しく偏っているか、じいさんばあさんがためこんでいるかである。前者の可能性は今の日本では考えにくいから、多分後者であろう。
さてじいさんばあさんが一般に欲望がしぼんでいる。いまさらものを買いまくったり、海外旅行をしまくったりしても、そんなに高揚感が訪れてくるわけではない。一方、老後の不安は切実だから、持ち金を「遺産」の形で子の世代にちらつかせながら自分たちの余生の保障を精神的な意味でも確保したいと考えている。これだけあればぼけて迷惑をかけたときにも心理的負い目が少なくてすむというわけだ。これは一人一人の高齢者の心理としては、きわめてまっとうな心理だと思う。だから預貯金が市場に流れないのである。
ではどうするか。ひとつ。じいさんばあさんの欲するところは何かをもっと真剣に考え、それを有効需要に転化するにはどうすればよいかについて知恵をしぼれ。ふたつ。これは下手をすると道義にもとる危険が高いが、子の世代が、親の財産を使えるような了解をじいさんばあさんからきちんととりつけられるように、「美しい親子関係」を作り上げる努力をもっとしてみよ。後半は半分冗談と受け取ってください。